大自然の中、誰もすべてっていないフカフカのパウダースノーの中を滑れるという爽快感を味わえる「バックカントリースキー」。スノーボーダーだけでなく、スキー板の性能も向上しスキーヤーの中でも人気が高まってきました。しかしゲレンデ近くだからと安心して少しコースを外れただけでも、あっという間に元のコースに戻れなくなることもあり、近年では多くの遭難者の報告があります。
バックカントリースキーでは十分な計画、十分な装備の下に入山したとしても、天候などにより方角がわからなくなって遭難するケースが報告されています。
このような状況の中、私たちスノーサーチではスキー場やバックカントリーでのアマチュア無線の活用を推進しています。アマチュア無線を使い、より楽しく、より安全にスキーが楽しめるようになります。ここでは雪山でのアマチュア無線の活用についてご紹介したいと思います。
ライセンスフリーとアマチュア無線の違い
アマチュア無線は国家資格です。国家資格は国家試験に合格しなくてはいけないため、敷居の高さを感じてしまいますが、実は非常に簡単に取得できます。一方で国家資格を取得しなくても利用できる無線もいくつかあります。「CB無線/市民ラジオ」や「デジタル簡易無線」、「特定小電力無線」などがあります。
アマチュア無線はライセンスフリーに比べてより強い電波を出すことができるということが挙げられます。最も簡単に取得できる四級アマチュア無線技士でも最大20W出すことができます。デジタル簡易無線など登録を必要とするものでも最大で5Wまでですから、その差は歴然。
さらに、アマチュア無線の場合、利用できるチェネル数の多さにも魅力があります。特定小電力無線局で421MHz帯で28チャネル、422MHz帯で21チャネル、440MHzで28チャネルですが、アマチュア無線は、そもそもこの~帯という周波数の種類が非常に多く利用でき、特に山などで使うハンディ機などでは、主に144MHzや430MHz帯を使いますが、144MHzなら144.70~145.55までの間、およそ84チャネル、430MHz帯ならおよそ239チャネルも利用できます。(”およそ”としたのは、他にも方式を変えたり、利用方法を変えるとさらに利用できるチャネルもあるからです。より詳しくはアマチュア無線のバンドプランをご覧ください。)
また、国家資格を取得する際にJARD(日本アマチュア無線振興協会)が開催している養成課程講習会を受講することで、電波や電気、電波法に関する知識をしっかりと学べるため、実際の運用時にも役立つ「知識」を身に着けることができます。この講習会を受講した人の合格率は98%まで引きあがります。講習会は丸々2日間かかりますが、私たちはこちらの方法での資格取得をおすすめします。(小学校1年生でも合格者が続出中です。)
広いゲレンデをカバーでき同時に複数に通報できる。
出力が強いアマチュア無線なら山頂からゲレンデの麓にあるレストハウスまでも十分に届きます。それだけでなく、となりのゲレンデや少し離れたところにあるスキー場にも条件次第で届きます。例えば志賀高原の焼額山から菅平高原などは直線で30kmくらい離れていますが、この間でも通信が可能です。また、電波を直接相手の端末に届けるため、基地局もいらないため、電波の飛び方を理解していれば自分で圏外をなくすことも可能です。
また無線の良いところですが、複数の人たちとグループでゲレンデやバックカントリーに出かけた際に同時に連絡ができるというメリットもあります。また、無線は周波数を合わせれば誰でも聞けてしまいます。しかしこれが便利な場合もあり、例えばあるパーティーがバックカントリーで安全なルートから外れた方向に行ってしまっていても、他のパーティーがそれを受信して注意を促すなど、ゲレンデにいる人同士でも状況を情報交換しながら進むことができます。
「誰かに聞かれている」という事が大切。
携帯電話が普及してくると、一対一の通話に慣れてしまっているため、このような考え方が失われてきてしまっていますが、パブリックで誰かが聞いているという通信網の中で人とやり取りをするというのは非常に大切な考え方です。聞かれているという前提は、雪山では重要です。例えばコース状況を伝えたり、現在地を伝えたり、待ち合わせ場所を決めたり、なにかやってほしいことを伝えたりする場合にも、気を付けて情報を取り扱うようになります。人に聞かれたくない無駄な通話は少なくなります。
また、アマチュア無線の免許を持っている人は全国に沢山います。現在でも44万人近い人たちがかわるがわる無線機を付けて、通信を傍受していてくれます。メインチャンネルと呼ばれる多くの人が待機している周波数帯があるため、ゲレンデやバックカントリー中に何かあった場合、自分のパーティーと連絡がつかなくなっても、全国のアマチュア無線家とつながる可能性が高いため、助けを読んだり、現状を報告したりすることができます。
山岳地域での電波状況の研究に
アマチュア無線は業務には利用できません。しかしながら上記のような個人利用で利用することで仲間同士で楽しく気軽に通話しながら、そして安全に雪山を楽しむことができます。これらの利用は、山岳地域での電波がどのように伝搬していくかなどの研究にもなります。強い電波が出せるアマチュア無線とは言え、届かなくなるエリアなども出てきます。その際には自分たちでどのように行動するのか、または設備やアンテナをどのようにするべきかなどの研究になります。これら電波の飛び方の研究は、是非他のユーザーとも共有して、新しい製品や技術開発に役立てていきたいものです。
以上の様にアマチュア無線はゲレンデで「音声」でのコミュニケーションツールとして、仲間同士だけでなく、スキーヤーとスノーボーダーを音声でつなぐソーシャルメディアとしての役割も果たし、また通信の性能や研究にも役立つものとなります。
より詳しいアマチュア無線の活用、情報については姉妹サイト「onAIrs:オンエアーズ https://www.onairs.net」をご覧ください。